四国八十八か所霊場第12番札所焼山寺と第13番札所大日寺の間には、番外札所の「鍬持ち大師」吉祥院があります。
吉祥院は弘法大師がみずから鍬を持って開拓し、土御門上皇の勅願所となった由緒あるお寺ですが、長らく廃寺となっていたため再建されたばかりです。
なので、今はまだお寺っぽくない外観をしていて、前を通ってもお寺だと気づかないかもしれません。
ご住職はご不在のことが多いですが、セルフの納経所では藍色の紙に書かれたかっこいい御朱印がいただけます!
吉祥院へのアクセス
吉祥院は国道438号線沿いにあり、場所はわかりやすいです。徳島市中心部から車で30分程度、国道438号線をひたすら佐那河内方面へ進み、府能トンネルを抜けて神山町に入り、トンネル出口からは3分程度で吉祥院に到着します。
外観がお寺っぽくないので近くを通っても見過ごしてしまいがち。
目印として、道路沿いに「きえずの霊火安置」という看板があり、道路をはさんだ向かい側に松葉庵という喫茶店があります。
吉祥院の駐車場
吉祥院には駐車場はありませんが、境内に乗り入れ可能。
駐車料金は無料です。
公共交通機関でのアクセス
吉祥院の周辺には駅がないため、車以外で行く場合はバスを利用します。
・JR徳島駅から徳島バス神山線オロノ経由に乗車し「青井夫」バス停で下車、徒歩3分
吉祥院の御朱印
吉祥院には御本尊の般若菩薩、番外札所「鍬持ち大師」の2種類の御朱印があります。ご住職が不在の場合が多いため、本堂横の納経所に書置きの御朱印が置かれています。
御朱印リニューアルしました!
以前は巨大な半紙でしたが、いつからか藍色の厚手の紙にリニューアルされていました。サイズも12cm×18cmサイズの御朱印帳に貼れる大きさに変わりました。
金色が映えてかっこいいですね✨
こんな感じで、1枚ずつ紙袋に入っています。
左が鍬持ち大師(御影入りなので見分けやすいです)、右が般若菩薩の御朱印です。
▼書置き御朱印の保管に便利です▼
吉祥院の御影
吉祥院で鍬持ち大師の納経をすると、御本尊のお姿を描いた御影(おすがた・おみえ)が無料でいただけます。
日本で唯一、鍬を持ったお姿の貴重な弘法大師ですよ✨
吉祥院について
吉祥院は平成14年(2002年)に再建されたばかりの新しいお寺です。
しかしその歴史は古く、皇族からの信仰も篤かったとても由緒あるお寺で、延暦19年(800年)に弘法大師によって開創されました。修行中の弘法大師がこの地を訪れたとき、山と大きな湖に囲まれて急斜面に畑を作り細々と暮らしていた村人を哀れに思い、みずから鍬を持って湖を埋め立てて開拓したという伝説があります。
村人の安寧を願って小さな庵を作って般若心経を書き写し、「苦を抜き楽を与える」という般若菩薩を御本尊としたことが吉祥院の始まり。弘法大師がこの地を離れた後は時代の流れとともに庵は荒廃し、直筆の般若心経も般若菩薩も行方がわからなくなりました。
その後、天永2年(1111年)に弘法大師を信仰していた阿波上人が白河法皇の第5皇子を迎えて庵を再興。貞応2年(1223年)には承久の乱によって阿波に御遷幸された土御門上皇が父の後鳥羽帝と弟の順徳帝の後生得楽を祈り、写経を納めて勅願所としました。
阿波上人の「華美な伽藍はいらない」という遺志を守り、小さな山寺として存続していた吉祥院も天正5年(1577年)に長宗我部元親による兵火で全焼。ついに廃寺となり、平成14年(2002年)に再建されるまでは伝説上のお寺でした。
正式には如竟吉良山(にょきょうきらざん)吉祥尊院(きっしょうそんいん)大慧金剛密寺(だいえこんごうみつじ)といい、真言宗御室派のお寺です。
白河法皇の第5皇子・聖恵法親王に院号を賜ったことから寺号よりも院号を尊重し、通称として「吉祥院」を名乗っています。
吉祥院の御本尊
吉祥院の御本尊は般若菩薩(はんにゃぼさつ)。
般若菩薩は知恵と慈悲を司り、般若心経を守護する仏さま。その知恵から仏を生み出すことから「仏の母」「般若仏母」とも呼ばれ、女性的な一面を持っています。
女性の守護本尊として信仰され、女性の厄除けや福授け、子授け、安産の御利益があります。
吉祥院の見どころ
吉祥院で個人的に気になる&おすすめの見どころを写真つきでご紹介します!参拝される前にチェックして参考になさってくださいね。
お寺っぽくないお寺
吉祥院にはお寺のアイコン的な山門や鐘楼などがなく、砂利敷きのだだっ広い境内にポツンと本堂がある感じ。入り口には院号を記した石碑があるのみです。
ここは本当にお寺…?と不安になりますが、お寺です。再建されてから20年ほどなので、現在はまだ仮本堂の状態なんです。
プレハブっぽい本堂
本堂はさらにお寺感ゼロですが、本堂前にはちゃんと納め札入れや香炉、御詠歌を書いた額などがありますよ。
本堂の内部はガラス戸越しに見えました。お寺の入り口に書いてある「消えずの霊火」は護摩堂内(納経所)の灯籠に灯されていますが、ご住職が不在のときは残念ながら拝観できません。
見どころが多い納経所
本堂の隣には納経所を兼ねた護摩堂があります。鍵が開いているのか、勝手に入っていいのか不安になる外観ですが、普通に入れました。
内部には複数の仏像がお祀りされていて、こちらに書置きの御朱印が置いてあります。お守りやお札なども、セルフサービスで拝受できますよ。
通常は中央の金色の灯籠に「きえずの霊火」が灯されています。参拝した日はご住職が不在のためか、残念ながら火はありませんでした。
護摩堂には弁財天と熊野半権現、脇侍として「如意一願不動明王」と孔雀明王が安置されています。吉祥院を参拝するときは、本堂だけでなくぜひ護摩堂の不動明王と弁財天にもお参りしましょう。
- 如意一願不動明王は正しい願いならば何でもひとつだけ叶えてくれるという御利益があります。
- 弁財天像は伝承によると弘法大師作、正しい心で信仰すれば出世開運の御利益を授かれます。
きえずの霊火
ご住職がいらっしゃったとき、撮影させていただきました!
わかりにくいですが、中央の金色の灯籠の中にろうそくに灯された火があります。
この火は広島県の厳島神社の別当寺・真言宗御室派大本山大聖院から特別に分火されたもの。大同元年(806年)、弘法大師が100日間の求聞持法を修法したときの護摩の火と同じもので1200年絶えず灯されています。
開山堂
2020年3月に参拝したとき、境内に新しいお堂が!本当にできたばかりのようで、ピカピカでした。
少しずつお寺らしくなっていますね✨
こちらには阿波上人をお祀りしています。
阿波上人は熊野で12年間修行し、人でありながら熊野権現の力を持つとして崇められた方なので、開山堂を作るにあたってご住職は阿波上人の尊像を手に熊野大社へ参詣されました。
阿波上人の尊像は僧衣で阿弥陀如来の印を結んでいて、熊野権現と同じお姿をしています(阿弥陀如来は熊野権現の本地仏=ほんじぶつ、神の正体とされる仏のこと)。
開山堂を拝するのは熊野詣の疑似体験というイメージで配置されたとか。
お堂の下には熊野の石が埋め込まれていて、開山堂の周囲の砂利も熊野の川のもの。昔の熊野詣では橋がない川を渡ってみそぎをしていたので、それをイメージしたそうです。
福徳地蔵
吉祥院の境内には福と徳を授けてくれるという「福徳地蔵」があります。
これは寺宝として伝わる土御門上皇の念持仏だった地蔵菩薩立像を模したもので、実物は年に一度9月28日の万灯会で御開帳されています。
九所権現
吉祥院の鎮守として、伊勢・八幡・春日・祇園・稲荷・熊野・厳島・大粟・蔵王の9か所の神々をお祀りしています。
「大粟」は吉祥院の近くにある、上一宮大粟神社が鎮座する大粟山のことでしょうか。
毘沙門天堂
立派な吊り燈篭がついたミニサイズのお堂には、毘沙門天がお祀りされています。
内部が2つに分かれていて、左側に毘沙門天、右側に千手観音が安置されています。千手観音は毘沙門天の化身といわれているため、一緒にお祀りされています。
ニュータイプ小坊主くん
吉祥院には四国八十八か所霊場とは違うタイプの謎の小坊主くんがいました。
見慣れない顔で、しっくりこない😂
まとめ
吉祥院は再建されたばかりなので、まだまだ境内は寂しい感じですが般若菩薩という珍しい御本尊、日本で唯一の鍬を持った姿の弘法大師像、土御門上皇ゆかりの地蔵菩薩像など、お寺の歴史や由緒に触れることができます。
ふだんは参拝する人が少ないので、境内をゆっくり拝観できるのもいいところ。
焼山寺と大日寺の間にあるので、お遍路さんはぜひお参りしてみては😆
▼名西郡の御朱印まとめ▼