四国八十八か所霊場第26番札所金剛頂寺(こんごうちょうじ)は標高165メートルの山の中腹にあります。
かつては女人禁制の厳しい修行の道場で、歴代天皇からの信仰も篤く、室戸市全域が寺領だったというほど栄えていました。現在もその当時を偲べるほど威風堂々とした本堂と広い境内のお寺で、「天狗問答」などの弘法大師伝説にふれることができますよ。
また、金剛頂寺は室戸市にある最後の札所で、24番札所最御崎寺が「東寺」と呼ばれるのに対し「西寺」と呼ばれています。境内にはそれを実感できるスポットもありました!
金剛頂寺へのアクセス
国道55号線沿いにいくつも案内標識があり、場所はわかりやすいですがお寺に近づくと道幅が少し狭くなるのでご注意を。
高速道路を利用する場合は高知自動車道南国インターから約60km、1時間30分程度です。
金剛頂寺の駐車場
お寺の入り口に金剛頂寺専用の大型駐車場があります。駐車料金は有料で、普通車の場合は200円。料金は納経所で支払います。
公共交通機関でのアクセス
金剛頂寺は最寄り駅からは距離があるので、車以外で行く場合はバスがおすすめです。
・土佐くろしお鉄道ごめんなはり線「奈半利」駅から18.1km
・高知東部交通バスに乗車し「元橋」バス停で下車、徒歩約20分(へんろ道経由の場合)
前後の札所
25番札所津照寺から3.8km
27番札所神峯寺まで27.5km
金剛頂寺の御朱印
金剛頂寺は本堂手前に納経所があります。納経料は300円です。
金剛頂寺の御影
金剛頂寺で納経をすると、御本尊のお姿を描いた御影(おすがた・おみえ)が無料でいただけます。
カラーの御影をいただく場合は別途200円が必要です。
金剛頂寺の納経受付時間
金剛頂寺の納経受付時間は7:00から17:00までです。
金剛頂寺について
弘法大師にとって初めてとなる勅願寺の創建がこの金剛頂寺だといわれています。
創建当初は「金剛定寺(こんごうじょうじ)」と号し、嵯峨天皇から「金剛頂寺」の勅額を賜ったことから寺号が改められました。書き間違えたのかな?
明治初期までは女人禁制だった厳しい修行の道場であり、歴代天皇からの信仰が篤く、かつての寺領は現在の室戸市全域に及ぶほど栄えていました。
金剛頂寺から4kmほど離れたところに「女人堂」と呼ばれる不動堂があり、女性はそこから遥拝していました。修行中の弘法大師も毎日そこからお寺まで行き来した(行道)といわれ、お寺がある場所は「行当(ぎょうとう)岬」と呼ばれています。
正式には龍頭山(りゅうずざん)光明院(こうみょういん)金剛頂寺(こんごうちょうじ)といい、真言宗豊山派のお寺です。
詳しくは金剛頂寺公式サイトでご確認ください。
金剛頂寺の御本尊
金剛頂寺の御本尊は薬師如来。
御本尊は弘法大師が刻んだもので、像ができあがったときに『早く行きて座りたまえ』と言うと、自ら本堂の扉を開いて入り鎮座したという伝説があるたいへん聞き分けのいい如来さまです。
秘仏のため非公開ですが、通常は前立本尊を拝顔でき、毎年大晦日から正月8日にかけては開帳されています。
金剛頂寺の見どころ
やっぱり階段
駐車場から本堂へ向かう途中、やっぱり立ちはだかる階段。134段ありますが、しっかりした手すりがある新し目の階段なのでそれほどハードではありません。
手すりにはかっこいい錫杖つき!
振るとシャランシャランといい音がします。同じタイミングで参拝していた団体のお遍路さんがめっちゃ鳴らしてたので、便乗してシャランシャランしておきました。本来はただの飾り…でしょうか。ですよね。
一段ずつ小銭を置いて厄払いするシステムは23番札所薬王寺と同じで、雨の日は滑りそうです。
真ん中には蓮の花の模様があります。微妙に厚みがあるので、蓮の中になんか埋め込まれてるのかも。
仁王門
仁王門は大正2年(1913年)に再建されたもの、金剛力士像は昭和59年(1984年)に作られた比較的新しいものです。
小柄でずんぐりむっくり系の金剛力士でした。
迫力ある本堂
仁王門をくぐると見えてくる威風堂々とした立派な本堂は屋根が特徴的で、ほんのり中国風。昭和58年(1983年)に新しく建立された比較的新しいものです。
「龍頭山」という山号からか、本堂の周りには龍がいっぱい。
香炉にでっかい龍、反対側にもいます。
雨樋の化粧くさりの下には巻き巻きの龍。
稚児大師尊像
本堂の右手には稚児大師尊像があります。
「稚児(ちご)大師」なのでもちろん子供の頃の弘法大師の像です、佐伯真魚時代の。修行大師像はほとんどのお寺で見かけますが、子供のお大師さんの像はかなり珍しいですよ。
子供の頃からすでに悟りを開いているかのようなこの表情、さすがお大師さん。
実際、お大師さんは御年7歳で『私は人々を救うために将来は仏門に入りたい、願いが叶わないならこの身を捨てる』と言い、断崖絶壁からジャンプした意識高すぎなお子でした。
余談ですが、このとき身を投げたのが73番札所出釈迦寺の奥の院「捨身ヶ嶽禅定(しゃしんがたけぜんじょう)」です。この絵は四国別格二十霊場第2番童学寺に奉納されているもので、金剛頂寺にはありません。
智光上人御廟
稚児大師像からさらに奥に行くと「智光上人御廟(ちこうしょうにんごびょう)」があります。
御廟の周りにはたくさんの丸い石がありますが、これは妊婦さんに御利益があるそうです。この石を持ち帰って妊婦さんのお腹にあて、無事に出産したらこの場所に戻すというしきたり。
「聖人」と評された智光上人の御廟は清浄なパワーが満ちる聖域で、パワースポットともいわれています。確かに、山の中にポツンとある廟なのに不気味な感じはなく、空気が澄んでいてとても居心地がよかったです。
本堂から智光上人御廟に続く道は高知県の天然記念物「ヤッコソウ」の自生地となっています。見ごろは11月下旬から12月上旬にかけて。
躍動感ある修行大師
金剛頂寺の修行大師像はなんだかずんぐりむっくりしていますが、足を踏み出した躍動感あるスタイルです。
徳島県では直立不動だった修行大師像も「修行の道場」高知県ではアクティブなのか、高知の札所ではこんな感じで足を踏み出した像が多かったように思います。
弘法大師が詠んだ「法性(ほっしょう)の 室戸といえど わがすめば 有為(うい)の波風 よせぬ日ぞなき」という歌が新古今和歌集にあるそうで、金剛頂寺にはその歌碑があります。
これは弘法大師が室戸岬で虚空蔵求聞持法(こくうぞうぐもんじほう)を修め、明星が口の中に飛びこんでくるという経験によって悟りを開いたときに詠まれた歌だとか。
西向きの大師堂
ずんぐりむっくり修行大師の裏側が大師堂です。
本堂に背をむけた珍しい西向きの配置で、天狗問答の伝説のとおり足摺岬の方向を向いています。
伝説にちなんだ3つのレリーフ
大師堂の裏側には三面のレリーフがあります。
これらは「弘法大師行状絵詞(ぎょうじょうえことば)巻二、金剛定額(こんごうじょうがく)」の場面で、室戸を舞台にした弘法大師伝説のエピソードが描かれています。
金剛定額、天狗問答、室戸伏龍の3つの場面が描かれていて、ざっくり言うと全部「お大師さんレスバトル最強伝説」。
若き日の弘法大師は金剛頂寺を訪れて修行をしましたが、天狗や異形の魔物たちが次々と修行の邪魔をしてきました。
魔物を説き伏せて足摺岬へと追いやった後、木に自身のお姿を彫って『我が姿を残し置く、我が身のある限り来障することなかれ』と言われました。さらに、お大師さんは金剛頂寺の大師堂からにらみをきかせているので、室戸は今日も平和です。
大師堂の周りには気になるものがいっぱい!
一粒万倍の釜
弘法大師がこの釜で米を炊くと万倍に増え、人々を飢えから救ったという伝説があります。金剛頂寺に修行僧がたくさんいた頃にこの釜で米を炊いていたそうですが、今では底が抜けて穴が空いていました。
この釜にお金を入れたら万倍に増えたりしないかなぁ(ゲス顔)。
がん封じの椿
「がん封じの椿」と書かれた木っぽいもの。節がボコボコしていて、ちょっとグロテスクな感じもあります。
もともとは大師堂前にあった椿の木で、枯れてしまったものを乾燥させました。この木を撫でるとガン封じになるといわれていることから参拝客に撫でられ続け、自然と今のようにツルツルテカテカになったそうです。
本堂では椿の模様がかわいい「がん封じ」のお守りの授与もありましたよ。
クセがすごい大師像
ずいぶんと独特なお顔立ちの地蔵さんやな…と思いきや、独鈷持ってるやん。お大師さんなの?こんなうすぼんやりした顔の弘法大師像、見たことない。
手編みの帽子とおしゃれな前掛けをつけてもらってご満悦でした。
宝物館「霊宝殿」
本堂の奥には「霊宝殿」という宝物館があります。
金剛頂寺は文化財の宝庫で、なかでも「金銅旅壇具」は日本にひとつしかなく、弘法大師が実際に使っていたというとても貴重なものです。
本坊方面も見逃せない
大師堂からまだ奥、本坊方面にもまだまだ見どころがあるんですが、今回の参拝では見逃してしまったのでメモだけ。
- 漁師など海で働く人々に信仰される「魚藍観音」像があり、高知らしくカツオを持っているとか。
- 「護摩堂」は寛文5年(1665年)に再建された歴史あるもの。
- 朝廷からの勅使を迎える門が「勅使門跡」として残っています。現在は門はなく12段の石段があり、その先に灌頂堂があります。
- 宿坊前の駐車場脇には不動明王に仕える「三十六童子」の像があります。
やっぱりオーシャンビューなお寺
金剛頂寺は境内からは海が見えませんが、仁王門近くのトイレや接待所の奥にある墓地周辺からはこんなオーシャンビューでした。
画質がアレですが、赤丸の中に屋根っぽいのが見えます。たぶんこれが25番札所津照寺の屋根で、津照寺から見たときはぜんぜんわかりませんでしたが”津照寺の本堂から金剛頂寺が見える”というのは本当。
そして、矢印のあたりにはクネクネした道があって、これは室戸スカイラインと思われます。ということは、この突き出た部分は室戸岬で最御崎寺があるあたりでしょうか?はえ~…遠くまで来たもんだ。
こうして見ると、最御崎寺が「東寺」、金剛頂寺が「西寺」と呼ばれているのがしっくりきますよね。
ちょうど真ん中あたりに津照寺があり、この3か寺が「室戸三山」と呼ばれてそれぞれの地域で古くから信仰され、大切にされてきたのがうかがえます。
薬王寺からなかなかたどりつけなくて難関だった室戸岬も、離れていくとなんだか名残惜しくなる不思議。
小坊主くん
金剛頂寺の小坊主くんは大師堂前にいました。ニュータイプには負けん!とばかりに死守しています。
まとめ
かつては室戸市全域が寺領だったほど栄えていた金剛頂寺には、現在でもその当時を思い起こせるような立派な本堂や数々の重要文化財があります。広い境内にはいろいろな見どころがあり、時間をとってゆっくりと参拝したいお寺でした。
参拝するまで最御崎寺と金剛頂寺が「東寺」「西寺」と呼ばれているのがピンとこなかったですが、金剛頂寺から見るとすごくしっくりきました。最御崎寺や津照寺の位置もなんとなくわかるので、ぜひ海を眺めてみてくださいね。
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