四国八十八か所霊場第36番札所青龍寺(しょうりゅうじ)は弘法大師ともゆかりが深い「波切不動(なみきりふどう)」で知られるお寺。
本堂までの急な階段で元横綱・朝青龍がトレーニングをしたことでも有名。車遍路にとってもそこそこの難関になるかもしれません。
東西に広い高知県は西に行くほどお寺同士の距離が延びますが、お気軽に行き来できるのはここまで。そろそろ修行の道場が本領発揮してきます😂
青龍寺へのアクセス
- 高知自動車道土佐インターから13km、20分
宇佐の渡し
青龍寺を遍路するときは、「宇佐の大橋」を渡る。昭和48年に橋が開通するまでは、浦ノ内湾の湾口約400mを船で渡った。弘法大師も青龍寺を創建するさいに、この湾を船で渡っていた。お供をした8人を残している。その子孫が「竜の渡し」というこの渡し船を、近年まで代々守り続けてきたと伝えられている。
(四国八十八箇所霊場会ホームページより引用)
青龍寺に行くには「宇佐大橋」という全長645mの大きな橋を渡ります(無料で通行できます)。
宇佐大橋が開通したのは昭和48年(1973年)、それまでは青龍寺に参拝するために渡し船に乗って横浪半島へ渡っていたとか…かつての青龍寺は四国霊場で唯一の海路でした。風情があっていいですが、ちょっと不便ですね💦
この渡し船は「宇佐の渡し」や「竜の渡し」と呼ばれ、お大師さんが青龍寺を創建するときももちろん船で渡っています。お大師さんはそのときにお供をした「井尻八人衆」と呼ばれる8人の船頭に「青龍寺に参拝する人のために渡し船を守るように」と言い、宇佐大橋が完成するまでの1000年以上、子孫の方が船頭を続けていたそうです。
青龍寺の駐車場
お寺はやや奥まった場所にありますが、駐車場は境内入り口のすぐ前にあるのでつきあたりまで道なりに進んでOKです。
有料スペース(30台分)と無料スペース(20台分)があるのでご注意ください。
公共交通機関でのアクセス
お寺の近くに駅やバス停がないため、車以外でのアクセスは困難です。
- JR土讃線波川駅から20.5km
- とさでん交通「宮前スカイライン」バス停から3.1km
前後の札所
35番札所清瀧寺から13.9km(約50分)
37番札所岩本寺まで58.5km(約1時間30分)
青龍寺の御朱印
青龍寺の納経所は仁王門近くにあります。
青龍寺の御影
不動明王の梵字「カーン」を元にしたデザインセンスに痺れる。
青龍寺について
寺伝によれば弘仁年間(810年 – 824年)に空海(弘法大師)によって開基されたとされる。入唐求法の遣唐使として、恵果和尚より真言密教の奥義を伝授された空海が帰国の折、有縁の地に至るように祈願して独鈷杵を東方に向かって投げた。空海はその独鈷杵がこの山中の松の木にあると感得し、嵯峨天皇に奏上。弘仁6年(815年)に恵果和尚を偲び、唐の青龍寺と同じ名の寺院を建立したという。本尊の波切不動は、空海が乗った遣唐使船が入唐時に暴風雨に遭った際に、不動明王が現れて剣で波を切って救ったといわれ、空海がその姿を刻んだものであると伝える。 江戸時代初期には荒廃していたが、土佐藩2代藩主山内忠義によって正保年間(1644年 – 1648年)に再興された。しかし、宝永4年(1707年)には地震と津波で大きな被害を受け、江戸末期に再建された。
(Wikipedia青龍寺(土佐市)より引用)
青龍寺は弘仁年間の創建で、1200年の歴史があるお寺です。
師匠である恵果阿闍梨を偲んで、弘法大師が唐の青龍寺と同じ名前の寺院をこの地に建立しました。本堂、大師堂、薬師堂が一直線に並ぶ伽藍配置は唐の青龍寺と同じだとか。
お大師さんとゆかりが深く、とても由緒あるお寺ですが何度も荒廃と再興を繰り返していて、
- 土佐藩2代目藩主・山内忠義が正保年間(1644~1648年)に再興
- 宝永4年(1707年)の「宝永地震」で被災し、江戸末期に再興
という歴史があります。
もともと青龍寺があったのは奥の院の位置で、現在の場所には別のお寺があったとか!荒廃&再興により、場所が変わってしまったんですね。
正式には独鈷山(とっこうさん)伊舎那院(いしゃないん)青龍寺(しょうりゅうじ)といい、真言宗豊山派のお寺です。
弘法大師、強肩伝説
Wikipediaにもあるように、青龍寺の建立にはこんな伝説があります💁♀️
入唐求法の遣唐使として、恵果和尚より真言密教の奥義を伝授された空海が帰国の折、有縁の地に至るように祈願して独鈷杵を東方に向かって投げた。空海はその独鈷杵がこの山中の松の木にあると感得し、嵯峨天皇に奏上。
遣唐使で唐へ渡った弘法大師が帰国するとき、「有縁の地に至るように」と独鈷杵(とっこしょ)を投げたんです。
唐 か ら。
参考までに、
- 西安から高知までの距離は大ざっぱに見積もっても約2200km
- やり投げの世界記録は98m48(ヤン・ゼレズニーの1996年の記録)
なんという強肩…!
ちなみに、このときに投げたのは独鈷杵・三鈷杵・五鈷杵の真言密教の法具三点セットですが、「三鈷杵(さんこしょ)」が引っかかったのが高野山の「三鈷の松」です。
五鈷杵はどこへ?
ものすごい余談ですが、独鈷杵は青龍寺の奥の院がある場所に、三鈷杵は高野山の「三鈷の松」に…というのは知っていましたが、「五鈷杵はどこへ…?」と思って調べてみました。
結果、よくわからず。
石川県珠洲市の法住寺というお寺に「なき桜」という桜の木があり、そこに弘法大師が唐から投げた五鈷杵が引っかかっていて、桜の泣く声がお経のように聞こえたという伝説がある…というのが唯一見つかった情報でした💦
青龍寺の御本尊
御本尊は不動明王、「波切不動(なみきりふどう)」と呼ばれています。
Wikipediaにも
本尊の波切不動は、空海が乗った遣唐使船が入唐時に暴風雨に遭った際に、不動明王が現れて剣で波を切って救ったといわれ、空海がその姿を刻んだものであると伝える。
という記載があるように、弘法大師にゆかりが深いお不動さんです。
”荒れる海を鎮めた”という伝説があるので、今でも漁師など漁業関係者からの信仰が篤いといわれ、海上安全や豊漁に絶大な御利益があるとか。
地元の遠洋漁業の乗組員は出発前に必ず参拝して海上安全を祈るといわれています。
青龍寺の見どころ
青龍寺で個人的に気になる&おすすめの見どころを写真つきでご紹介します!参拝される前にチェックして、参考になさってくださいね。
龍がいっぱい!
青”龍”寺なので、やっぱり龍が目につきます。岩から飛び出る感じの手水舎の龍がかっこよかった✨
いっぱい!とかいいながらあんまり写真撮ってなかったけど😗
重厚な仁王門
本堂に向かうと、重厚な仁王門が待ち構えていました。
いつ作られたものかは不明ですが、高知は廃仏毀釈が激しかった地域なので明治以降と推測。比較的新しい感じがするので、それほど古いものではなさそう…🤔
門前には大きな紅葉の木があるので、紅葉シーズンに行ってみたいです!
金網があるため、仁王さんはちょっと見えにくいです💦
ガラス玉のようなリアルな目玉が入っているので、少女漫画並みに目がキラキラしていました✨
マッチョなボディーとの落差がすごい。
仁王門をくぐるとすぐ、川をまたぐ太鼓橋があります。
「この先は聖域」という雰囲気でした。
三重塔
鮮やかな赤色が印象的な三重塔もあります。
こちらは1992年に再建されたもので、まだピカピカでした。
聖天堂
太鼓橋を渡ると右手に「聖天堂」が。
聖天=歓喜天(かんぎてん)を祀るお堂です。内部は暗く、何も見えませんでした。
横綱を作った階段
青龍寺といえばこの階段!
元横綱・朝青龍が明徳義塾高校相撲部時代、この階段で足腰をきたえたというのは有名な話で、朝青龍という四股名も青龍寺が元になっています!
仁王門の前から階段は続いていますが、ここから先だけで約170段あります。
紫陽花の季節には階段に沿って花が楽しめるとか。でも上るのに必死すぎてそれどころじゃない予感。
行場の滝
階段の途中には滝があります。
参拝したときは水はチョロチョロしか流れてなかったんですが、ここは「行場」なのでたまに滝行をしている方の姿もあるとか。
遭遇したらびっくりしますよね😂
弁財天の祠
階段の途中には弁財天の祠もあります。
「弁天さん」と親しまれる神さまで、七福神の紅一点。商売繁盛や金運アップ、芸能上達などの御利益があり、水の神なので水辺にお祀りされていることが多いですね。
階段を上がりながら撮影したので驚愕のブレブレ具合なので、写真を載せるか迷いました。はからずも階段の過酷さが伝わります😂
本堂
本堂まででも盛りだくさんな内容でしたが、ここからが参拝本番。青龍寺本堂の建立年は不明ですが、とても重厚です。
扁額には「波切不動尊」とあり、上の龍の彫刻が立体的ですごい✨
屋根には土佐藩主・山内家の家紋「三つ葉柏」がありました(写ってないけど)。
後光がさして神々しいです。
本堂の右脇陣に重要文化財の愛染明王が安置されています。毎月、旧暦28日に本堂が開扉されて拝顔できるとか…日程を合わせて参拝したいですね✨
びんずるさん
高知のお寺ではあまりお見かけしない印象のびんずるさんですが、青龍寺ではいらっしゃいました!
本堂の縁側の右奥に小さなお堂があり、安置されています。古いものなのか、両手の手首から先がありませんでした。痛々しいお姿です。
お不動さん
青龍寺の御本尊は不動明王なので、本堂の前には2体の不動明王像がありました。向かって右側は古そうな石像、左側は比較的新しい感じの銅像です。
ちなみに、石仏のほうは弘法大師作と伝わる御本尊を模したものだとか!通常は拝顔できないので、こちらの像をしっかり拝みましょう✨
左のお不動さん、羂索いっぱい持っててめっちゃ助けてくれそう😂
大師堂
本堂の左側には大師堂があります。
こちらも建立年は不明ですが、かなり新しそうな雰囲気。
薬師堂
本堂右側には八角形の薬師堂があります。こちらもかなり新しい雰囲気のお堂でした。
もともとこの場所には薬師如来を本尊とする別のお寺があり(寺号は不明)、現在の奥の院の場所にあった青龍寺をこの地に移すとき波切不動を本堂に安置したため、薬師如来を祀るために作られたお堂のようです。
鎮守堂
薬師堂のさらに右、境内の右端には鎮守堂があります。
こちらはあまりお参りする人がおらず、ひっそりとしていました。
扁額も苔むしていて読めませんが、Wikipediaによると、こちらには白山大権現が祀られているようです。
鳥居の前には狛犬さんがいました。
かわいい!😍
台座も苔むしていて文字が読み取れませんが、「天保」って書いてるように見えました。年数ははっきり読めませんが、天保年間は1830年~1844年まで。
江戸時代後期なので、青龍寺が再建されたときに奉納されたものかもしれませんね。
西国三十三観音霊場の写し
本堂の向かいにはズラッと石仏が並んだお堂があります。
こちらは西国三十三観音霊場の写しです。写し霊場をお参りすると巡礼したのと同じ功徳が得られるといわれるので、見つけたらぜひお参りしましょう!
四国霊場に西国霊場の写しがあるのは珍しい気がします。
奥の院遥拝所
見落としましたが、本堂の奥には「奥の院遥拝所」があるそうです。
青龍寺奥の院はお大師さんが強肩で唐から投げた独鈷杵が引っかかっていた場所とされる聖地中の聖地です。
詳しくは後述します。
恵果和尚の墓
(画像出典:Wikipedia恵果)
こちらも見落としましたが、青龍寺境内のどこかに「恵果阿闍梨の墓」があるとか!
調べてみるも情報がさまざまで、
- 石段の途中にある
- 三重塔奥の山道にある
など、ちょっと場所がはっきりしません💦
恵果阿闍梨は日本には来ていませんが、こちらのお墓にも分骨されているので本物のお墓です。
恵果堂
納経所の隣にある「恵果堂」には恵果阿闍梨をお祀りしています。
ここだけ中国みたい😂
恵果阿闍梨とは?
淡路島七福神 智禅寺の真言八祖画(左から弘法大師、恵果阿闍梨、一行阿闍梨、善無畏三蔵)
ここまで何回かお名前が出た「恵果阿闍梨(けいかあじゃり)」について、簡単に説明しておきますね💁♀️
恵果は真言宗を開いた宗祖・真言八祖の1人(七租)で、弘法大師・空海の師匠にあたります。
当時の超先進国・唐でも右に並ぶ者がいないといわれる名僧で、皇帝に直接指導もするような立場のすごい人!
1000人の弟子がいたといわれますが、遣唐使で唐へ渡った弘法大師の才能を見抜き、自分の後継者に指名しました。
運命的な出会い!
初対面から半年ほどで密教のすべてを教わり、帰国した弘法大師は真言宗の開祖となります。
ちなみに、伝法を終えてわずか数か月で恵果は亡くなっているので、会うのが少しでも遅かったら密教は途絶えていました。仏教の伝来は日本に大きな影響があったので、恵果と弘法大師の出会いがなければ国の形が大きく変わっていたかもしれません。
大師堂でお唱えする「南無大師遍照金剛」の遍照金剛(=この世の一切を遍く(あまねく)照らす者)とは弘法大師を表す宝号ですが、名づけたのも恵果阿闍梨です。
まとめ
青龍寺は唐の青龍寺を模した伽藍配置のお寺で、お大師さんの師匠・恵果阿闍梨のお墓もあり、唐から投げた独鈷杵が落ちた場所でもあります。
四国霊場でもとくに重要な場所である、と言ってもいいかもしれません。
本堂まで170段の階段があるそこそこの難所なうえに、次のお寺まで1時間30分以上かかるので、納経の時間などを考慮して参拝コースを設定してくださいね!
お時間に余裕があれば、独鈷所が落ちた場所である聖地、奥の院・不動堂にもぜひ参拝を。
おすすめのお立ち寄りスポット
青龍寺の近くで近くで御朱印がいただける神社仏閣や、あわせて行きたいおすすめスポットをまとめました。
奥の院・不動堂
(画像出典:Wikipedia青龍寺(土佐市))
奥の院は青龍寺から南へ600~700mほどの場所にあり、もともとお寺があったのがこの場所です。弘法大師が唐から投げた独鈷所が落ちた場所もここ。
青龍寺から歩いて行くルートもありますが、車で近くまで行けるようです。
不動堂は太平洋に突き出した断崖の上に建っています。ここに青龍寺があった頃はどんな感じだったのか、気になりますよね。
ここは最近まで女人禁制だったといい、鳥居から先は今でも裸足で参拝するのが習わしという聖地中の聖地です。
地図はこちら💁♀️
神母神社
宇佐大橋へ向かい途中にある、道路と道路に挟まれた不思議な神社。道路を通すときは土地の強制収用もできるのに神社の場所は一切動かさず、道路を迂回させるほどに地元で篤く信仰されているようです。
一見さんは確実に読めませんが”神の母”と書いて「いげ」と読み、これは高知特有の神社名のようです。御祭神は泣沢女命(ナキサワメノミコト)、伊弉諾尊の涙から生まれた水の神で、稲の神・田んぼの水の神として祀られます。
御朱印などはありませんが、次回青龍寺に行くときは参拝したいと思っている場所です。
地図はこちら💁♀️
土佐龍温泉山陽荘
宇佐大橋を渡り、青龍寺に向かう途中にあるのが土佐龍温泉山陽荘。巨大な「黄金大師」という看板が嫌でも目に入りますよね😂
こちらには「弘法大師が示した場所から温泉が湧きだした」という伝説があり、お遍路さんの宿としても人気で、日帰り入浴も可能。無料で利用できる足湯もあります。
ヴィラサントリーニ
日本じゃないみたいな光景が人気のホテル「ヴィラサントリーニ」が青龍寺のすぐ近くにあります。
行ってみたいけど、宿泊しないと敷地には入れない…よね💦
ちなみに、奥の院はヴィラサントリーニの近く。この記事がルートの参考になるかも。