四国八十八か所霊場第30番札所善楽寺(ぜんらくじ)は高知市にあるお寺。土佐国一の宮・土佐神社のすぐ隣にあり、別当寺として創建されました。
実はつい最近まで”30番札所が2つある”という状況で、「遍路迷わせの札所」と呼ばれていましたが、現在は安楽寺は30番札所奥の院となっています。
善楽寺へのアクセス
周辺には案内標識や看板がいくつもあり、場所はわかりやすいです。
・高速道路を利用する場合、高知自動車道高知インターから約1.8km
善楽寺の駐車場
善楽寺には参拝者が無料で利用できる駐車場があります(普通車20台)。
公共交通機関でのアクセス
・JR土讃線土佐一宮駅下車、1.5km
・とさでん交通「一宮東門」バス停下車、200m
前後の札所
29番札所国分寺から6.9km
31番札所竹林寺まで6.6km
善楽寺の御朱印
善楽寺は太子堂の隣に納経所があります。納経料は300円です。
納経所は売店を兼ねていて、四国霊場のお遍路グッズのほかにもかわいい御朱印帳や善楽寺オリジナルグッズなど幅広く取り揃えています。
善楽寺の御影
善楽寺で納経をすると、御本尊のお姿を描いた御影(おすがた・おみえ)が無料でいただけます。
カラーの御影をいただく場合は別途200円が必要です。
善楽寺の納経受付時間
善楽寺の納経受付時間は7:00から17:00までです。
善楽寺について
大同5年(810年)、弘法大師が高加茂大明神(現在の土佐国一の宮・土佐神社)の別当寺として神宮寺とともに創建したといわれています。応仁年間(1467年~1469年)には兵火によって焼失しましたが、2代目土佐藩主・山内忠義の庇護を受けて栄えました。
善楽寺は四国霊場では珍しい女性住職のお寺で、高知県の札所では唯一です。たまたまご住職に御朱印を書いていただけましたが、クリっとした坊主頭のかわいらしい方で、まだ30代前半くらいのお若い女性でした。
正式には百々山(どどざん)東明院(とうみょういん)善楽寺(ぜんらくじ)といい、真言宗豊山派のお寺です。
善楽寺の御本尊
御本尊は阿弥陀如来で、本堂で拝顔できます。
★阿弥陀如来は土佐神社の御祭神の本地仏とされています。
もうひとつの30番札所
わりと最近の2004年まで、65年間にわたって「30番札所が2つある」時代があったのをご存知ですか?
善楽寺は明治初期の神仏分離によって廃寺となり、御本尊は一時期第29番札所土佐国分寺に移されていました。明治8年(1875年)、先に復興していた安楽寺に御本尊が移されて安楽寺が30番札所に。
昭和4年(1929年)に一宮周辺住民の方々の運動によってようやく善楽寺も再興しますが、ここで「本家」と「元祖」の争いが勃発。お互いが「我こそが30番札所である!」と主張し(まあ、当たり前ですよね)、長らく30番札所の納経はどちらのお寺でも受けることができました。
ですが、30番札所はどっちに行ってもいいといわれてもお遍路さんは困ってしまいますよね。実際、当時は両方に参拝する方が多かったそうです。
平成6年(1994年)、ようやくこの本家vs元祖の争いが決着して善楽寺が30番札所、安楽寺は30番奥の院という形におさまりました。
★国の重要文化財に指定されている御本尊の阿弥陀如来坐像は現在も安楽寺に安置されているようです。
善楽寺の見どころ
ビッグ十一面観音
善楽寺には山門などはなく石柱のみのシンプルな入り口ですが、代わりに巨大な十一面観音さまがそびえています。インパクト抜群でした。
この巨大な観音さまは台座だけで3m、像は5mあり、合わせると高さ8mの巨人。観音さまらしいおだやかで優しげな表情は、善楽寺の本山である長谷寺の「長谷観音」をモデルにして作られたそうです。
天邪鬼が支える手水舎
納経所の前にある手水舎も見どころで、手水鉢を支えるかわいい天邪鬼がいます。よく見ると向かって右側の子が左の子をチラ見しているように見えます。反対側にも2体の天邪鬼がいますよ。
隣にあるこの古い水鉢は宝暦3年(1753年)に長宗我部元親の嫡男のために土佐神社で千部経の大法会を行ったとき、出仕僧が寄進したもので「千部經出?僧」「奉寄進」「宝暦三…」という文字が読み取れます。
近代的な本堂
本堂はコンクリート製で近代的な感じで、善楽寺が復興した昭和4年(1929年)に建てられ、昭和57年(1982年)に改築されたものだそうです。
扉は開いていますが、中に入ることはできません。
仏足石
本堂の前には「仏足石(仏足跡)」がありました。金ぴかで、四国霊場でよく見かけるタイプです。仏足石は足腰に御利益があるので、仏足石を撫でた手で自分の足腰をさするといいそうです。
不動明王
本堂前には不動明王も鎮座されています。このお不動さん、天地眼じゃない…ですね。そして珍しいストレートヘアでいらっしゃいます。
第27番札所神峯寺のお不動さんは彩色ありで、天地眼とパンチパーマ風くせ毛がわかりやすいです。
大師堂
大師堂は大正時代に建立されたもので、善楽寺にある建物ではいちばん古いもの。昭和9年(1934年)に改築されました。
御本尊の弘法大師像は墨で黒く塗ることで廃仏毀釈から逃れたため、「厄除け大師」として信仰されています。厄年のお参りや交通安全等の祈願をする人が多いそうです。
本堂と大師堂の間には修行大師像があり、大師像の前には大きな梅の木があります。後述する「梅見地蔵」は元はこの場所にありました。
梅見地蔵
本堂の向かいにある「梅見地蔵」は文化13年(1818年)に作られたお地蔵さまで、整地の都合でこの場所に移されました。
お顔は少し上を向いた角度で、梅の木の下にあったときはちょうど梅を仰ぎ見る姿だったので「梅見地蔵」と呼ばれて親しまれていました。横から見ると、微妙に上向きなのがわかりやすいですよ。
梅を見上げるお地蔵さまのお姿が”首が正常に動く”と転じ、首から上の病気にご利益があると信仰されるようになりました。主に脳の病気(認知症やノイローゼ)、目・耳・鼻の病気のほか、学力向上や試験合格まで幅広くお願いごとを聞いてくれるお地蔵さまです。
梅見地蔵の枕カバーなど、グッズも納経所で購入できますよ。
子安地蔵
梅見地蔵の隣には子安地蔵堂があり、弘法大師作と伝わる子安地蔵が安置されています。
安産や子宝の御利益があり、こちらのお地蔵さまも信仰されています。難産で苦しむ妊婦に弘法大師が祈祷し、無事に出産したという伝説があります。
金網があって見にくいですが、お前立と思われる像を拝顔できます。
かわいいお地蔵さんの絵馬
お地蔵さんの形をしたコロンとかわいいものがたくさんぶら下がっていますが、ぬいぐるみではなく絵馬。絵馬としては珍しいフェルト製で、納経所で購入して奉納できます。絵馬かけは子安地蔵堂の隣にあるので、安産や子宝祈願をする人が多いとか。
お地蔵さんの絵馬は奉納せずに持ち帰ってもOKです。
烏枢沙摩明王
善楽寺のトイレには烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)がいます。
納経所ではトイレに貼るお札も買えます(一体500円)。
烏枢沙摩明王のお姿を描いたお札が中にありますが、この状態のままで設置する模様。「烏枢沙摩明王御影袋」と書かれていますが、表の紙はガッチリくっついていて、無理にはがすとお札が破れそうな感じでした。
小坊主くん
善楽寺の小坊主くんは超絶個性的。
古くなった小坊主くんを檀家さんと一緒に修理したそうで、どうせならかわいく!とのご住職の要望によって他のお寺とは違うラブリーな小坊主ができあがったそうです。
まとめ
善楽寺は神仏分離で一時廃寺となっていましたが復興し、昭和から平成にかけての「30番札所2つある問題」も無事に乗り越え、現在はしっかりと四国霊場第30番札所としてお遍路さんを迎えています。
廃寺となっていた影響で境内にあるものは比較的新しいですが、廃仏毀釈を乗り越えた「厄除大師」や首から上の病気に御利益がある「梅見地蔵」など、見どころがたくさんあります。
納経所には一般的な巡拝用品のほかにもかわいらしい御朱印帳や仏像グッズなどが充実していて、高知県で唯一の女性住職ならでは品ぞろえも楽しみのひとつです。
善楽寺のすぐ隣(徒歩30秒)には土佐国一の宮・土佐神社があるので、合わせて参拝してみては。
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