四国八十八か所霊場第17番札所井戸寺は徳島市内にある最後の札所です。
井戸寺という寺号のとおり、境内には弘法大師が掘ったという「面影の井戸」があり、井戸に映った自分の姿を彫った「日限大師」像もあります。”面影の井戸に姿が映らなければ3年以内に厄災がある”といわれているので、ぜひ井戸寺でチャレンジしたいところ。
面影の井戸以外にも、全国的にも珍しい御本尊・七仏薬師如来像が本堂で拝顔できるなど、井戸寺には見どころがたくさんありますよ。
井戸寺へのアクセス
県道30号線沿いに案内標識があり、道路沿いにお寺も見えて場所はわかりやすいです。
- 徳島自動車道藍住インターから6.3km
- 高松自動車道板野インターから9.5km
井戸寺の駐車場
井戸寺には参拝客が無料で利用できる大型駐車場があります(普通車30台)。
駐車場から境内までは少し離れていますが、徒歩1分~2分程度です。
公共交通機関でのアクセス
井戸寺に車以外で行く場合、JRとバスが利用できます。
- JR徳島線府中(こう)駅から1.5km
- JR徳島駅から徳島バス覚円線に乗車し「井戸寺口」バス停下車、300m
前後の札所
16番札所観音寺から2.8km
18番札所恩山寺まで16.8km
井戸寺の御朱印
井戸寺は日限り大師の奥に納経所の建物があります。納経料は300円です。
揮毫は右から「奉納」、薬師如来の梵字、「七仏薬師」「井戸寺」です。
【new】倶利伽羅龍王の御朱印
2023年8月に参拝したとき、新しい御朱印がありました✨いつから頒布されているかは不明ですが、炎の中で剣にからみつくバリかっこいい倶利伽羅龍王が素敵すぎました。
こちらは書置きのみで、志納料は500円です。
井戸寺の御影
井戸寺で納経をすると、御本尊のお姿を描いた御影(おすがた・おみえ)が無料でいただけます。
カラーの御影をいただく場合は別途200円が必要です。
井戸寺の納経受付時間
井戸寺の納経受付時間は7:00から17:00までです。
井戸寺について
井戸寺は白鳳2年(673年)に天武天皇の勅願道場として創建されました。8町(1町は109メートル)四方の広大な敷地に七堂伽藍、末寺12坊を持つ大寺院で、当時は「妙照寺(みょうしょうじ)」という寺号でした。
弘仁6年(815年)に弘法大師がこの地を訪れ、十一面観世音菩薩像を刻んで安置しています。そのとき、民衆が水不足や濁り水に悩んでいると聞き、錫杖で一夜にして井戸を掘ったという言い伝えがあります。
この言い伝えから、寺号を「井戸寺」に、地名も「井戸村」としました。現在でも、このあたりは「国府町井戸」という地名です。
貞治元年(1362年)には細川頼之の兵火で堂宇が全焼、再建されましたが天正10年(1582年)には長宗我部元親による兵火でまたも全焼、慶長年間(1596年~1615年)に徳島藩主・蜂須賀氏によって再興が始まり、万治4年(1661年)にようやく本堂が再建されました。
正式には瑠璃山(るりざん)真福院(しんぷくいん)井戸寺(いどじ)といい、真言宗善通寺派のお寺です。
井戸寺の御本尊
井戸寺の御本尊は七仏(しちぶつ)薬師如来。薬師瑠璃光如来を中心に六仏の姿がありますが、すべて薬師如来が民衆を救うために姿を変えたものです。
井戸寺の七仏薬師如来は聖徳太子作と伝わり、全国的にもとても珍しい御本尊。御本尊に唱える御真言は、七仏じゃない薬師如来と同じ「おん ころころ せんだりまとうぎ そわか」でOKです。
また、脇侍の月光菩薩と日光菩薩は行基菩薩作と伝わっています。
御本尊はつねに拝顔できるそうですが、私が参拝したときは夕方16時すぎだったせいか本堂が閉まっていました。早めの時間に行くのがおすすめです。
井戸寺の見どころ
蜂須賀家の屋敷から移された門
入り口のひときわ大きな仁王門は、どことなく他のお寺とは違う雰囲気がありますよね。
それもそのはず、徳島藩主・蜂須賀家の屋敷(大谷別邸)から移築されたもので、珍しい武家造りなのです。眼光鋭い金剛力士像は、鳩よけの網でやや見えにくいのが残念。
門の裏側には巨大なわらじが奉納されていて、これは四国霊場で最大の大きさです。必見。
手水舎の蛇口
井戸寺の手水舎はものすごくシンプルな蛇口タイプ。
ひしゃくは天井から吊り下げられた棚に置かれています。収納上手。
避雷針が気になる本堂
遠くから見ると立派な屋根瓦ですが、意外なことに本堂はコンクリート製。
藩主によって再建された本堂は昭和43年(1968年)に火災で焼失していて、現在の本堂はその3年後に再建された新しいものです。御本尊は中尊の薬師瑠璃光如来のみ無事でした。
屋根にはお寺ではなかなか見ることがない巨大な避雷針がついていて、もう火災を出さないぞという井戸寺の強い決意を感じます。
雀大師
本堂の前には大きな修行大師像がありますが、「雀大師」という名前がついていてラブリー。
弘法大師が手に持っている鉢にちょこんと雀が乗っていて、足元にも2羽の雀がいますよ。
雀大師の由来は、大師像を奉納した舞踊家の藤栄(ふじえ)流が受け継ぐ「雀(じゃく)」という名前にちなんだもののようです。
光明殿
本堂の隣にあるカラフルなお堂は光明殿といい、中には位牌とイスがたくさん並んでいて、ここが井戸寺の永代供養納骨堂のようです。
光明殿と大師堂の間にあるプレハブ小屋は、歩きのお遍路さんのための通夜堂(宿泊施設)だそうです。中には布団とコンセントがあり、無料で宿泊できるので、歩き遍路の方は利用してみては。
大師堂
大師堂は160年ほど前に建てられたもので、格子の隙間から大師像を拝顔できます。
見逃しましたが、大師堂の右側には鬼子母神を祀る「訶梨帝母(かりていも)天堂」という小さな祠があるそうです。鬼子母神には安産の御利益があり、妊婦さんはお堂にある石を持ち帰り、無事に出産すると石を2つにして返すという風習がありますよ。
びんずるさん
光明殿と大師堂の間には賓頭盧(びんずる)尊者がいます。
「びんずるさん」と呼ばれるなで仏で、体をさすると病気が治るという信仰があります。井戸寺のびんずるさんは全身なで回せるタイプ。
びんずるさんには、みかん(デコポン?)とヤクルトがお供えされていました。他のお寺では、びんずるさんへのお供えものはほとんど見かけない気がします。
日限大師と面影の井戸
本堂に向かって左手には奥に鐘楼と「日限大師」、水子地蔵があります。
水子地蔵前にある手水舎の龍さんは、角がなくてしょぼくれた感じ。水を吐き出す姿もどこかお疲れのご様子で、勢いがありませんでした。
日限大師には、5日や7日など日数を限定して毎日お参りをすると願いごとが叶うという言い伝えがあります。
お堂の中には弘法大師の石像があり、「水大師」とも呼ばれています。この像は井戸に映った自分の姿を弘法大師が彫ったものだとか。
日限大師のお堂の中には、弘法大師が掘った「面影の井戸」が残っています。弘法大師のお姿が映ったことから、面影の井戸という名前がついたそうです。
この井戸をのぞいて姿が映らないと3年以内に厄災が起こるといわれています。3番札所金泉寺にも同じような言い伝えのある「黄金の井戸」がありますが、井戸寺のほうがややマイルド。
金泉寺では「姿が映らないと短命(3年以内に死ぬ)」というさらにハードなパターンでした。
面影の井戸も中が暗く、意外と深さがありました。
無事に姿が映って一安心、無病息災が約束されました。
弘法大師の御加持水をテイクアウトできる!
面影の井戸の水は、持ち帰りが可能です。
壁際にテイクアウト用の容器が並んでいて、容器代として100円をお賽銭箱に納めます。白い容器のほうがフタがコップ代わりになるので扱いやすいですよ。空のペットボトルなどがあれば、持参してくむこともOKです。
お加持水は面影の井戸からくむのではなく、蛇口からキューっと出てきます。
この水は飲用も可能、ひんやりとしたおいしい水でした。
十一面観音を祀る大悲殿
井戸寺の境内には「大悲殿」と書かれた六角形のお堂があります。中には阿波西国三十三観音霊場の御本尊・十一面観世音菩薩像が安置されています。
このお堂は護摩堂を兼ねていて、護摩堂の御本尊の不動明王も安置されています。ダブル御本尊。
入り口には大きく「国宝」と書かれていますが、Wikipediaによると現在は国の重要文化財です。
徳島は国宝ゼロ県なんだぞ
瀬戸内寂聴さんが眠るお寺
2021年11月に99歳で亡くなった作家の瀬戸内寂聴さん。生前から長年住職を務めた岩手県の天台寺、京都にある「寂庵」、故郷の徳島の3か所に分骨することを望んでおられました。
井戸寺に永代供養の納骨堂「雀の郷」ができたことを知り、納骨を希望されたそうです。左下に「瀬戸内寂聴」というネームプレートがあります。
参考:読売新聞オンライン(2022年5月16日配信)「納骨堂のピンクのオブジェがかわいくて生前「私も入りたい」…寂聴さん、古里で納骨」
小坊主くん
井戸寺の小坊主くんは大師堂の隅に打ち捨てられていました😂
かわいそう。
まとめ
井戸寺は住宅街の中にあり、お遍路さん以外にも近所の方がお参りする姿をよくみかける地域密着型のお寺。四国霊場では珍しい、地域で愛されるほのぼのとした雰囲気です。
白鳳時代からあるとても歴史の長いお寺で、境内には弘法大師が掘った井戸、御本尊は聖徳太子作と見どころが多いのも特徴。弘法大師が掘った井戸のお加持水は持ち帰ることができるので、面影の井戸をのぞいたあとは無病息災を願って水をいただいくのがおすすめですよ。
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おすすめのお立ち寄りスポット
井上八幡神社
井戸寺のすぐ隣にあり、井戸寺と同じ頃に創建されたというとても歴史ある神社。道路をはさんだ向かいに宮司さんのお宅があり、御朱印もいただけますよ。