四国八十八か所霊場第20番札所鶴林寺は勝浦町の山の中にあります。
阿波の遍路転がしで「一に焼山、二にお鶴、三に太龍」といわれる、”お鶴”がついに来ました。ちなみに”太龍”は21番札所太龍寺なので、まさかの遍路転がし続きとなります。
長宗我部元親ですら焼くのを諦めるほどの険しい山の中にあり、釈迦が説法をしたインドの霊山「霊鷲山」と雰囲気が似ているので同じ山号がつけられたという、四国霊場でも屈指の聖地です。
鶴林寺へのアクセス
鶴林寺への道は山のふもとまではやや入り組んでいますが、周辺には案内標識やお遍路さん向けの看板などがたくさんあるので迷わず行けると思います。山道に入るとほぼ一本道なのでわかりやすく、軽自動車だとめいっぱいアクセルを踏んでも20kmくらいしか出ない急角度な道です。
途中の「鶴峠」で鶴林寺への分岐があるので、通り過ぎないようにご注意を。通り過ぎると太龍寺方面へ抜けてしまいます。
狭くてほとんどガードレールもないですが、舗装されていて離合できる場所もちょいちょいあるので、車の場合はそれほど遍路転がし感はありません。
徳島自動車道徳島インターから国道55号線と県道16号線を経由して約30km、1時間20分くらいの場所です。
鶴林寺の駐車場
鶴林寺には参拝客用の駐車場がありますが、有料(普通車300円)です。
納経所で車で来たかの確認があり、駐車料金を支払うと鶴の交通安全ステッカーがもらえますよ。
公共交通機関でのアクセス
鶴林寺周辺には駅がなく、バス停からも距離があるので車以外でのアクセスはかなり厳しいです。
・JR牟岐線立江駅から13.5km
・徳島バス勝浦線に乗車し「生名」バス停で下車、鶴林寺まで3.4km
前後の札所
19番札所立江寺から13.1km
21番札所太龍寺まで6.7km
鶴林寺の御朱印
鶴林寺は大師堂の隣に納経所があります。
鶴林寺の御朱印は鶴の印がかわいいですよね。白衣の背中にも鶴の印を押してもらえます。鶴林寺の鶴と39番札所延光寺の亀の印がそろうと縁起がいい感じになるので、お遍路さんに人気がありますよ。
・19番札所立江寺の奥の院・星谷寺(しょうこくじ)→「星の岩屋(ほしのいわや)」のほうが通じるかも
・阿波秩父観音霊場第9番札所観正寺の納経も鶴林寺で行っているそうです
鶴林寺の御影
鶴林寺で納経をすると、御本尊のお姿を描いた御影(おすがた・おみえ)が無料でいただけます。
カラーの御影をいただく場合は別途200円が必要です。
鶴林寺の納経受付時間
鶴林寺の納経受付時間は7:00から17:00までです。
鶴林寺について
鶴林寺は延暦17年(798年)に桓武天皇の勅願によって弘法大師が開基したと伝わっています。
桓武天皇以降も平城、嵯峨、淳和の三代にわたって天皇が帰依し、源頼朝、義経や阿波の大名・三好長治、徳島藩主・蜂須賀家からも信仰されました。
鶴林寺は標高約520メートルある鶴林寺山のほぼ頂上、標高495メートルに位置していて、四国霊場で7番目に高い位置にあります。天正の兵火で徳島の寺を焼いて回った長宗我部元親でさえ、山の上すぎてあきらめたほどの立地です。
正式には霊鷲山(りょうじゅざん)宝珠院(ほうじゅいん)鶴林寺(かくりんじ)といい、高野山真言宗のお寺です。
鶴林寺の御本尊
鶴林寺の御本尊は地蔵菩薩、国の重要文化財に指定されています。
山で修行をしていた弘法大師がつがいの鶴が守る小さな黄金の地蔵菩薩像を見つけ、霊木に地蔵菩薩像を刻んで胎内に納めて御本尊としました。
この御本尊は「矢負い地蔵」とも呼ばれています。昔ある猟師が矢で射った猪が走り去り、血のあとをたどって行くと鶴林寺の本堂にたどりつき、御本尊に矢がささって血を流していたという伝説があります。猟師は殺生を後悔して門前で自害したといわれ、鶴林寺の参道には「猟師塚」と呼ばれる猟師の墓が残っています(駐車場から少し下った3丁石の付近、道路からはやや離れた場所)。
鶴林寺の見どころ
鶴がいる仁王門
駐車場から少し歩くと仁王門が現れます。
仁王門では金剛力士と鶴がダブルでお寺を守っていて、金剛力士像は運慶作と伝わっています。鶴が手前にいて、残念ながら少し見えにくいです。
鶴はなかなか眼光鋭くて怖い顔です。
聖地感がある苔むした参道
仁王門から本堂までやや距離があり、苔むした緑の空間を歩いて行きます。周りは山、お遍路さん以外には人もいないのでかなり静かです。団体さんとかち合わない限り、聖地感を満喫できます。
苔の中には不動明王像や劇画タッチの弘法大師像がひそんでいました。
徳島県最古の丁石
山のふもとから続く鶴林寺の参道には古い丁石がたくさん残っていて、全部で13基あります。そのうちの11基は南北朝時代(1300年代)に作られたもので、これらは徳島県内最古、四国の遍路道でも最古の丁石だとか。古い丁石が並ぶ約1.6kmのエリアは「鶴林寺道」として国の史跡にも指定されています。
駐車場から本堂へ向かう間にも丁石がいくつかありますが、どれも年代が読み取れないほど古いものでした。本堂に続く階段の前に一丁石、仁王門の近くに二丁石がありますよ。
鶴が守る本堂
慶長9年(1604年)に建てられた本堂は屋根がなんとなく神社っぽい。本堂の前にも大きな鶴の像があり、こちらは青銅製で高さ3メートルほど。向かって右が阿形、左が吽形の鶴です。
頭に壷のようなものを載せている人?状況がよくわからない謎の彫刻が気になります。
御本尊降臨の杉
鶴林寺の縁起に登場する、つがいの鶴が御本尊を守っていたという杉の木。本堂の裏側に「御本尊降臨之杉」として残っています。
意外と近くで見ることができ、見上げても先が見えないほどの大木。杉の木の前には弘法大師像がお祀りされていました。
貴重な三重塔
本堂の右奥には三重塔があり、江戸時代末期の文政6年(1823年)に建てられたものが現存しています。藩政時代に建てられて残っている三重塔は、徳島県ではこれだけというとても貴重なものです。
塔には大日如来を中心とした金剛界五智如来がお祀りされていますが、拝顔はできません。
この塔は彫刻が見どころ。一周ぐるりと細かい彫刻があり、天女や龍のほか鬼退治のようなストーリーっぽいものもあります。
四方には屋根を支えているマッスルボディな人がいます。
鶴林寺は21番札所太龍寺と向かい合う位置にあり、太龍寺からはこの三重塔がうっすらと見えます。赤丸の中、木の間にぼんやり何か建物っぽいのがあるのわかりますか?
不動堂のびんずるさん
鶴林寺の賓頭盧(びんずる)尊者は大師堂と一体化した不動堂にひっそりと。「びんずるさん」と呼ばれるなで仏で、体をなでると病気が治ると信仰されています。
びんずるさんは生命力がみなぎる赤いボディが基本ですが、鶴林寺では茶系。
不動堂にはなんとなく邪悪な顔の鶴の彫刻がありました。
大師堂
「桓武天皇御勅願所」という札が掲げられている鶴林寺の大師堂。すぐ隣に納経所がありますが、お守りなどは大師堂に並んでいます。
大師堂はフルオープンですが原則立ち入り禁止で、内部の写真撮影も禁止です。
小坊主くん
本堂にはピッカピカの新品な小坊主くん。目がキラキラしすぎて、誰だよお前と思ってしまう変貌ぶり。
まとめ
鶴林寺は天正の兵火で被害にあわなかったので、徳島の札所では珍しく古いものがたくさん残っているとても貴重なお寺。とくに徳島県では唯一残る藩政時代に作られた三重塔は見事な彫刻があって必見ですよ。
境内には鶴林寺の鶴のマークがたくさんあって、隠れ鶴を探すのも楽しいです。見どころが多く、たどりつくのが難しい遍路転がしのひとつでもあるので、ぜひゆっくり時間をかけて参拝してくださいね。
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