四国八十八か所霊場第10番札所切幡寺は山の中にあるお寺。
今までは平坦な道ばかりだったのに、急に秘境感あふれる場所に現れます。
さらに、前後の札所間の距離も短めだったものが切幡寺以降は突然10km以上ある道のりになり、いよいよお遍路の本番に突入といった印象。足慣らしはここで終わりですよ、と言われている気がします。
一番札所から順に参拝した場合、いちばん最初の難関となる333段の階段があることでも有名で、歩き遍路にとっても車遍路にとっても厳しいお寺です。ですが、上り切ったときの達成感と眺めは最高です!
切幡寺へのアクセス
切幡寺は標高155メートルの山の中腹にあるため、県道139号線から細い山道へと入ります。
県道12号線を脇町方面へ進み、切幡寺の案内標識がある「切幡変電所」で曲がります。
切幡寺の参道には門前町が広がっていて、歩きのお遍路さんは門前町から続く細い道を上がっていきますが、車の場合は門前町を通り過ぎて山に続く細い道を上がっていきます。切幡寺へ続く山道はわかりにくいですが、「日浅モーターズ」のところに小さな看板があります。
高速道路を利用する場合、徳島自動車道土成インターから7.9kmで約15分です。
切幡寺の駐車場
切幡寺には参拝客が無料で利用できる駐車場があります(普通車20台)。
納経所隣の駐車場へは傾斜がきつい細い道を通るため、普通車以上は通行できないのでご注意を。
公共交通機関でのアクセス
切幡寺は公共交通機関でのアクセスが困難な場所にあります。
JRを利用する場合
- JR徳島線阿波川島駅から6.3km
- JR徳島線学駅から6.5km
- 駅からタクシーを利用する場合はJR鴨島駅のほうが待機しているタクシーがあるので便利です。JR鴨島駅から切幡寺まではタクシー利用で20分程度。
バスを利用する場合
- 市場交通学線「市場」バス停で下車、切幡寺まで2.6km
前後の札所
9番札所法輪寺から3.8km
11番札所藤井寺まで9.3km
切幡寺の御朱印
切幡寺は本堂の左手前に納経所があります。納経料は300円です。
奥の院をお参りする場合は忘れずに。
切幡寺の御影
切幡寺で納経をすると、御本尊のお姿を描いた御影(おすがた・おみえ)が無料でいただけます。
カラーの御影をいただく場合は別途200円が必要です。
切幡寺の納経受付時間
切幡寺の納経受付時間は7:00~17:00までです。
切幡寺について
切幡寺は弘仁年間(810年~824年)に弘法大師によって開基されました。
山号、院号、寺号も「機織り娘」の故事にちなんだもので、弘法大師が名づけました。機織り娘のことを嵯峨天皇に伝えたところ、勅願で堂宇が建立されました。
長宗我部元親による天正の兵火(1582年)で焼失し、その後再建されています。明治時代にも再び火災にあい、現存している堂宇はそれ以降に建てられたものです。
機織り娘の故事から女性を困難から救う女人救済のお寺として、古くから女性に人気があるお寺。
もとは近くにある同じ山号・院号を持つ大野寺(おおのじ)の末寺でしたが、切幡寺が四国霊場の札所となっています。
正式には得度山(とくどざん)灌頂院(かんじょういん)切幡寺(きりはたじ)といい、高野山真言宗のお寺です。
女人即身成仏の伝説
切幡寺の本堂右手奥にある「はたきり観音」と呼ばれる銅像には、こんな伝説があります。
弘法大師がこのあたりで修行をしていたとき、托鉢に訪れるたびに機織りの手を止めて粟などを快く差し出す娘がいました。また、この娘は『ほころびた僧衣を繕いたいので、布を分けて欲しい』という弘法大師に、織りかけの布を惜しげもなく切り裂いて差し出しました。
娘の行いに感激した弘法大師は娘に『何か望みはないか』と聞き、娘が『父と母の供養のために千手観音を彫って欲しい』『自分も仏門に入って精進したい』と言ったので、その場で千手観音を刻み得度させて灌頂を授けたところ、娘は七色の光を放って即身成仏し、千手観音の姿になったといわれています。
切幡寺の御本尊
切幡寺の御本尊は弘法大師が機織り娘のために刻んだ千手観世音菩薩。
弘法大師作の千手観音を南向きに、機織り娘が姿を変えた千手観音を北向きに安置しているそうで、本堂にも「本尊南面千手観世音」と書かれています。
機織り娘が姿を変えた千手観音は開基以来の絶対秘仏で、一度も開帳されたことはありません。
本堂には切幡寺大塔の御本尊だった大日如来も安置されています。
中を見ることはできませんが、奥殿の近くからお参りできるようになっているので、切幡寺を参拝するときは本堂の奥まで行ってみましょう。
切幡寺の見どころ
駐車場より手前にある仁王門
車で参拝すると仁王門を通り過ぎてしまいますが(仁王門の奥が駐車場)、少し引き返して正式なルートである仁王門からお参りしましょう。
金網にガッチリ守られた金剛力士像。
金剛力士像は鮮やかな赤い肌で迫力のある表情ですが、ちょっと見えにくいのが残念です。
立ちはだかる「是より333段」
駐車場から境内までおよそ800mの距離。
駐車場から歩いてすぐ、切幡寺名物の心を折りに来る「是より333段」の石碑がそびえたちます。
古い石段のため段の高さがバラバラなので、見た目以上にしんどいです。切幡寺は最低でもスニーカーで、歩きやすい靴で行きましょう。
本堂へ向かう途中は階段脇の古い丁石を見て、『一丁って何?』とか考えたり、
『これ何て読むんや…』とか考えたり、
気分転換しながらひたすら登りましょう。
ちなみに一丁は約109mで、謎の文字列は「弘法大師おんかぢすゐ(御加持水)」と読むそうです。
一生懸命階段を上がって最初に見える建物は本堂ではなく、経木流しのお堂でそこから階段がさらに234段続きます。
「経木流し」は先祖供養の場。
毎年春分の日と秋分の日に経木(きょうぎ)に先祖の戒名などを書き、水をかけて供養するのが切幡寺の伝統行事で、両親の供養をしたいと願った機織り娘の思いが受け継がれています。
お彼岸に切幡寺に行くと、先祖や亡くなった家族に会えるという言い伝えもありますよ。
切幡寺本堂
本堂が見えたときにはものすごい達成感があります。
階段からは正面に本堂、右手に手水舎と大師堂、左手に納経所が見えます。階段のハードさに比べて、意外なほどあっさりとしたコンパクトな境内です。
切幡寺の納経所横にある自販機のラインナップがかなり充実していて、ベンチも複数あるのでお参りの前には休憩するのがおすすめ。阪神タイガースラベルの水をやたらとプッシュしてきます。
本堂には巨大な数珠がぶら下がっていました。
由来がよくわかりませんが、「大念珠繰り(おおねんじゅぐり)」というやつでしょうか。四国霊場ではとても珍しいもので、先祖供養、無病息災に御利益があります。
回すとジャラジャラといい音がします。切幡寺での正式な作法は不明ですが、皆さん勢いよく回していましたよ。
切幡寺大塔と大塔からの眺めは必見!
切幡寺大塔は高さ24メートル、明治時代に大阪から約10年かけて移築されたものです。
慶長12年(1607年)に豊臣秀頼が父・秀吉の菩提を弔うために徳川家康のすすめで住吉大社の神宮寺に建てたという二重の塔。一層目と二層目がともに方形の塔は切幡寺大塔以外に現存していないというとても貴重なもの。国の重要文化財に指定されています。
中に入ることはできませんが、彫刻が素晴らしいので外観だけでも見る価値はあります。
切幡寺大塔のさらに奥には切幡寺奥の院「八祖大師(はっそだいし)」があります。時間の都合と階段の疲れで、残念ながら参拝はできず。
大塔まで上がると視界が開け、眺めがいいですよ。
遠くに見える四国山地の山並みと吉野川、吉野川沿いに広がる平野に家や畑が並ぶ田舎の絶景パノラマビューです!木がなければもうちょっと絶景感があるんですが…。
四国霊場は山の上にあるお寺が多いですが、景色がいいお寺って意外と少ないんですよね。
本堂の屋根には珍しい迦陵頻伽がいますが、これは切幡寺大塔に登らないと見えない特権です!
小坊主くん
切幡寺では本堂の前にたたずんでいました。
なんか目がおかしい。
まとめ
切幡寺は山の中腹にあり、アクセスは不便ですがとても眺めがよく、静かな環境にあります。
333段の階段はつらいですが、どうしても無理な場合は車で上まで行けるので楽々お参りもできますよ。
境内はそれほど広くはありませんが、ここでしか見られない貴重な大塔と大塔からのパノラマビューや美しいはたきり観音など、見どころがあるお寺ですよ。
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