四国八十八か所霊場24番札所最御崎寺(ほつみさきじ)は高知県室戸市の室戸岬の先端に位置しています。23番札所薬王寺からは平坦な道ながら山と海に挟まれた一本道を延々と80km近く進むので、精神的に遍路転がしなお寺。
近くには弘法大師が修行をした御厨人窟(みくろど)もあり、お大師さんにゆかりが深い土地です。
最御崎寺へのアクセス
高知自動車道南国インターから約2時間、国道55号線をひたすら室戸岬を目指して進みます。最御崎寺は標高164メートルの山の上にあり、海沿いを延々進んだと思ったら最後は突然の山登り。
車の場合に通行する「室戸スカイライン」は無料でした。
最御崎寺の駐車場
室戸スカイラインを通ってお寺の入り口まで行くと、道路沿いに無料で利用できる駐車場があります(普通車50台)。
駐車場では「お迎え大師」が迎えてくれ、海も見えます。
駐車場から本堂までは坂道や階段があるので、長距離を歩くのが難しい場合はもっと本堂寄りの場所に有料駐車場もあります。
公共交通機関でのアクセス
最寄駅から歩ける範囲ではないので、車以外で行く場合はバスを利用します。
■鉄道を利用する場合
- 安佐海岸鉄道甲浦駅から41.2km
- 土佐くろしお鉄道ごめんなはり線奈半利駅から26.9km
■バスを利用する場合
高知東部交通バス「室戸岬」バス停で下車、900メートル
前後の札所
23番札所薬王寺から75.4km
25番札所津照寺まで6.5km
最御崎寺の御朱印
最御崎寺は本堂の左手に納経所があります。納経料は300円です。
最御崎寺の御影
最御崎寺で納経をすると、御本尊のお姿を描いた御影(おすがた・おみえ)が無料でいただけます。
カラーの御影をいただく場合は別途200円が必要です。
最御崎寺について
弘法大師が大同2年(807年)に嵯峨天皇の勅願によって本尊の虚空蔵菩薩像を刻み、最御崎寺を開創しました。もとは奥の院・四十寺がある四十寺山にありましたが、寛徳年間(1044年~1055年)に現在地に移ったといわれています。
26番札所金剛頂寺が「西寺」と呼ばれるのに対し、最御崎寺は「東寺」と呼ばれています。
瓦にも「東」という紋入りでした。
落雷による火災で堂宇を焼失し、元和年間(1615年~1624年)に2代目藩主・山内忠義の支援によって再興。明治時代の神仏分離令によって再び荒廃しましたが、大正時代になって再興しています。
正式には室戸山(むろとざん)明星院(みょうじょういん)最御崎寺(ほつみさきじ)といい、真言宗豊山派のお寺です。寺号の「最御崎寺」には「火つ岬(ほつみさき・火の岬)」という意味があり、海に向かって聖なる火を焚く古代からの信仰を表しています。
古くから厳格な修行の聖地で、明治5年(1872年)まで女人禁制でした。
最御崎寺の御本尊
最御崎寺の御本尊は虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)。
虚空蔵菩薩は「智慧の菩薩」と呼ばれ、宇宙のように無限の智慧を持ち、人々に授けてくれる仏さまです。本堂の御本尊は拝顔できませんが、鐘楼堂の隣に大きな虚空蔵菩薩の石像があります。
四国霊場で御本尊が虚空蔵菩薩のお寺は最御崎寺のほか、21番札所太龍寺と12番札所焼山寺の3か寺だけというレア御本尊ですよ。
最御崎寺の見どころ
仁王門への道
駐車場からはお迎え大師横の石段ではなく、坂道を進むのが参拝順路となっています。坂道をそのまま進むと室戸岬灯台へ行けます。
なかなか急角度な坂道、ふくらはぎが悲鳴をあげます。
参道には等間隔にスタイリッシュな灯籠があり、ひとつひとつに仏像や世界の偉人の彫像がありました。現代の偉人、ダライラマもいます。
ダブル金剛力士な仁王門
坂道を上がり切ると迎えてくれる仁王門、ようやくここまでたどりついたと感慨深いです。仁王門前にも修行大師像があり、お大師さんが迎えてくれました。
門前には豪快な無縁墓のピラミッド。徳島の札所ではまったく見かけなかったので、別の土地に来た感があります。
最御崎寺の仁王門は表と裏にダブル金剛力士という贅沢構造、ダブルは初めてかも。表は網目が小さくて見えにくかったですが、裏側はオープンでした。
鐘楼堂
仁王門を入ってすぐ目に入るのが立派な鐘楼堂。
この鐘楼堂は土佐藩2代目藩主山内忠義が寄進したもので、慶安元年(1648年)に建立されました。築400年弱。NHK「ゆく年くる年」の除夜の鐘に過去5回登場したそうで、記念碑もありました。
現在は本堂の奥に新しい鐘楼堂ができたため、こちらは使用されていません。
裏側にはミニ四国霊場があり、小さな石仏が並んでいます。
ラブリーな多宝塔
最御崎寺の多宝塔はなぜかピンク色、パステルカラーで女子受けバッチリです。
大師堂と一畑薬師
本堂の手前には大師堂があります。通常は本堂→大師堂の順に参拝しますが、この配置だと先に大師堂にお参りしたい。
大師堂の隣には「眼病平癒一畑薬師奉安殿」と書かれた小さなお堂があります。
これは「目のお薬師さん」で知られる島根県の一畑(いちばた)薬師を勧請したもので、四国霊場では最御崎寺と52番札所太山寺にしかありません。もちろん一畑薬師と同じく目に御利益があるので、眼病や目に気になる症状がある方はお参りしてみては。
中国風な本堂
立派な本堂、屋根が何となく中国っぽいですね。本堂の周辺には「空海の七不思議」のひとつ、クワズイモが群生していました。
大きな香炉を支えるラブリーな童子も髪型とか服装がどことなく中国っぽい。
彫刻も手が込んでいてすごい。これも中国の民話的なやつですかね、仙人っぽいおじいちゃんが秘伝の巻物を授けてるシーンでしょうか。どんな話だよ。
びんずるさん
本堂には賓頭盧(びんずる)尊者がいます。
なで仏で、体の悪いところと同じところを撫でると病気が治ると信仰されています。高知の札所は他県に比べるとびんずるさんが少ない印象です。見かけたら忘れずになでなでしておきましょう。
境内で空海の七不思議を見る
室戸には「空海の七不思議」として伝わる伝説があり、そのうちの2つは最御崎寺の境内で見られますよ。
冥土まで届く「鐘石」の音
この鐘石を小石で叩くと鐘のような音が鳴り響き、その音は冥土にいる家族や知人に届くといわれています。叩いてみるとたしかに「キーン」という感じの金属みたいな音がしました。
この石は斑糲岩(はんれいがん)という石でできていて、かつては奥の院・一夜建立の岩屋や水掛地蔵に置かれていたのが最御崎寺へ移されたそうです。
食べられなくなったイモ
修行中の弘法大師が空腹に耐えかねて川でイモを洗っていた老婆にイモをひとつ所望したところ、老婆は『このイモは食べられない』と嘘を言いました。すると、その日から本当に煮ても焼いても食べられなくなり、「クワズイモ」と呼ばれるようになりました。
別格二十霊場第4番札所・鯖大師ではサバをもらえなかったので塩サバを生き返らせて海に戻した、という伝説もあり、お大師さんといえども空腹時のいじわるは根に持つんですね。やっぱり食べ物の恨みは恐ろしい。
その他の七不思議
残りの七不思議はこちら、室戸岬灯台の入り口付近や国道55号線沿いに点在しています。ほとんどのスポットが近くに固まっているので、最御崎寺へのお参りついでにすべて周ることもできます。
■一夜建立の岩屋
弘法大師が一夜にして岩盤を掘り、幅1.2メートル、高さ2.3メートル、奥行き9メートルの洞窟を作ったという伝説があります。そこに唐から持ち帰った如意輪観音像を安置したので「観音窟」と呼ばれています。現代の技術でもこの大きさの洞窟を一夜で掘ることは不可能だとか。お大師さんすげぇ。
最御崎寺は明治初期まで女人禁制だったため、女性はここから遥拝していました。現在は奥の院となっています。
■捻岩(ねじりいわ)
かつては女人禁制の聖地だった最御崎寺。弘法大師が修行中に母の玉依(たまより)御前が訪ねてきましたが、女人禁制の禁を破ったために突然嵐が起こりました。弘法大師は母君を守るため、法力で岩をねじ曲げて洞窟を作り、母を避難させました。さらに念仏を唱えて嵐を鎮めたといわれています。お大師さんやっぱりすげぇ。
■明星石
弘法大師が室戸岬で修行中、夜な夜な海から毒龍(炎や毒の煙を吐いて民衆を苦しめる悪い龍)が現れ、妖怪や異形を集めて邪魔をしてきました。たまりかねて真言を唱えながら海に向かって唾を吐くと海岸の石が光輝き、毒龍や妖怪たちは光を恐れて逃げていきました。明星石は「幸せの石」とも呼ばれています。
■目洗いの池
眼病に苦しむ民衆のため、弘法大師が池の水に加持祈祷をして病気を治したといわれています。この池の水は一度も涸れたことはなく、今も清らかな水をたたえています。
■行水の池
御厨人窟で修行中の弘法大師が沐浴した池と伝わっています。弘法大師が毘沙姑巌(びしゃごいわ)で背中をこすったため岩は滑らかになったといわれています。
目洗いの池と行水の池は海の干満にさらされながら真水をたたえる不思議な池です。
一言お願い地蔵
本堂からへんろセンター方面へ順路通りに進んでいくと、途中に「一言お願い地蔵」があります。一生に一度、ひとつだけ願いごとを叶えてくれるお地蔵さま。小さなお地蔵さんは1体1000円で奉納できます。
最御崎寺の宿坊である「へんろセンター」手前には護摩堂?(左)と歓喜天(右)がお祀りされていました。高知の札所にはお聖天さんがお祀りされていることが多いです。
お堂の周辺の植栽も南国っぽい雰囲気で、高知県に来た実感がわきます。
池の周りにはうさぎや布袋さんっぽい石像などが無造作に転がっていました。なんでうさぎ?
小坊主くん
最御崎寺には大師堂前と本堂前にダブル小坊主くん。
ピカピカですが、徳島にいたのと何か違う。
まとめ
最御崎寺は「修行の道場」と呼ばれる土佐国・高知の最初の札所です。徳島県最後の札所・薬王寺から延々と海沿いを長距離進んで、さっそく修行の道場の洗礼を受けます。
明治初期まで女人禁制だった厳格な修行の道場は今でも聖地感があり、広い境内には見どころがいっぱいでした。
周辺には番外霊場「御厨人窟」や奥の院「一夜建立の岩屋」を始め、空海の七不思議スポットもあるのでお参りとあわせて弘法大師の足跡をたどってみては。
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